Bedroom Audio Style

寝室で、気負わずに良い音と気持ちの良い住環境を求めていくトコロです。

オーディオマニアの定番優秀録音CD 〜ピアノ編〜vol.1 木住野佳子 プラハ

音の美しさに酔いました。
2003年に録音されたこの作品は、プラハ出身のベーシスト、ジョージ・ムラーツの協力を得て、木住野佳子がストリングスカルテットと12人編成のストリングセクションを、自らのアレンジで使い分けながら、おそらくはムラーツの紹介だろうドラマーとのトリオで吹き込んだ一枚です。一曲目からラストに至るまで、統一されたノスタルジィやセンチメンタルなムードが漂います。型番はUCGJ-7002でSACDハイブリッドのSACD層を聴いています。

美しい曲が11曲も並んでいるのですが、個人的には1曲目のオリジナル曲フォレスト・レインは、ストリングスカルテットとピアノトリオが絡んで、とても幻想的かつスリリングな演奏。僕はこの曲を初めて聴いて、映画のワンシーンのようだと感じました。7曲目までのオリジナル曲はどこか映画音楽を思わせるようでいながら、ピアノトリオという核を忘れさせない絶妙な仕上がりになっています。

マイルス・デイヴィスビル・エヴァンスゆかりの8曲目ブルー・イン・グリーン、これはジョージ・ムラーツとのデュオ。ムラーツのベースは軽やかでいながら時には深く沈み込んで、リスナーのブルーに寄り添うよう。木住野とムラーツは対等な関係でこの曲を展開しています。美しいデュオ。9曲目こちらもエヴァンス・トリオの名演で知られるサム・アザー・タイム。作曲はバーンスタインです。ストリングスカルテットと複雑に絡み合いながら構築される美しい響きはプラハの街を眺めているような気がします。最後の11曲目、チェコ出身の作曲家ドヴォルザークから交響曲第九番新世界より第2楽章をGoing Homeとしてソロで演奏しています。これも素晴らしい演奏でアルバムのフィナーレに相応しい郷愁とブルーなある種のメランコリーを抱かせるような美しさに満ちています。しかしここでの聴きどころは特に冒頭から聞こえてくる、ピアノのペダルを踏むノイズです。このペダルがきちんと再生されれば、かなり細かい音まで拾っていることがわかるのではないかと思います。解像感、分解能といった類のテストにもってこいですね。

このプラハというアルバムは、決して極端に生々しい音がするとか、迫力がすごいといったような種類の音ではありませんが、ピアノの打鍵の繊細さやドラムのシンバルワークの巧みさなどを非常に丁寧に拾っています。さらにペラペラのストリングスが入ることで逆に安っぽくなるようなこともなく、ストリングスの音の良さもしっかりと確保されています。プラハのエンジニアたちの職人気質の細工物を見るような美しい1枚です。

プラハ
プラハ
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木住野佳子
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