Bedroom Audio Style

寝室で、気負わずに良い音と気持ちの良い住環境を求めていくトコロです。

愛機VICTOR SX-700についてあれこれ

SX-700について語られる言葉には優等生や端正といったものがあると思う。しかし僕の抱いているイメージは異端であり始まりがぴったりくる。なるほど、確かにSX-700の音を聴けば前述のようなキーワードが語られるかもしれない。しかし、時代やビクターのスピーカー群を見てみるとSX-700はある種のブレイクスルーを狙って造られたのではないかと想像してしまうのだ。

僕の知る限り1989年に生まれたSX-700はSX-500の上級機としてまたSX-900の弟分という位置づけにあった。ただ異端であったのはトールボーイ型だったことだ。当時をリアルタイムでマニアとして過ごしたわけではないので推察も多分に含まれるが、まだまだブックシェルフ型が多い時代背景にあり、JBLを代表するような大型ブックシェルフが多数存在した中にあって、珍しい存在だった。パイオニアのS-99twinやS-77twinを直接のライバルとしていたように思う。特筆したいのはSX-700の構成で、パイオニアのように仮想同軸の2WAYではなく、SX-500的な2WAY+SX-1000(900)譲りのボトムウーファーの3WAYだったことだ。ボトムウーファーは口径こそ20cmと当時としては小振りながら、クロスカーボンコーンを搭載している。トールボーイとは言っても現在ならフロア型の範疇に入りそうなサイズではある。SX-700のトールボーイ型2WAY+ボトムウーファーこそが後のビクターのトールボーイスピーカー開発に大きな影響を与え、いわば基礎になったのではないかと考えている。ビクターのスピーカー設計者がフォステクスに移ったという話を耳にした。なるほど、近年のFOSTEXスピーカーのユニット構成はなんとも一時のビクターとよく似ている。

今でこそトールボーイ型は占有スペースの小ささと音質に寄与する形状から、ブックシェルフとならんで主流の位置にあるが、1989年頃はあまり歓迎されていなかった様に思う。なぜならば、シリーズ化してベストセラーになった500系と比べて700系はspirit化された時に25cmウーファーと5.5cmスコーカーの大型3WAYブックシェルフ化されている。言わばSX-700のスタイルは一代限りのもので、直接の後継機は出なかったのだ。後にSX-V7、SX-LT55やSX-L77等で2WAY+ボトムウーファーの思想を継ぐ機種が出ている。また、FOSTEXからもGX103やG1302等で近い思想を見ることができる。

2WAY部分(18cmクルトミュラーペーパーコーンと3.5cmシルクドームツィーター)

さて、SX-700を四畳半寝室に入れて5年ほど経つが、当初は所謂低音の出るスピーカーとは思っていなかった。その辺の事情は過去ログにあるので割愛するが、和室という空気のスカスカ抜ける部屋では20cmウーファーだろうが全く問題なく使えるということだ。いや、問題はあるのだが使えないなんてことはない。恐れることはないのである。低域の出方はソースに入っている分だけ出ると言えばわかりやすいだろうか。ブンブン唸るような音が入っていればそのように鳴るし、控えめであればそれなりにといった風情だ。密閉型なので量より質を重視した低域は間違いなく、良質なソースをよく聴くと随分下のほうまで伸びているのを感じとることができる。クロスカーボンコーンからは癖らしい癖を感じ取ることがまだできない。中域から高域にかけてはまとまりがよくやや華やぎのようなものがある。しかし、強烈な個性を持つスピーカーから見れば落ち着いた音を出す部類に入る。まだ底が見えない感じなのがこだわって使い続ける理由のひとつでもある。

ボトムウーファー(クロスカーボンコーン、キャビネット内部は補強を兼ね完全に仕切られて、2WAY部との干渉はない)