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オーディオテクニカの中庸を知る。ATH-CKM55レビュー


ちょっとしたオーディオ通ならば、オーディオテクニカが輝くような高音域を特徴に持っていることを知っている。テクニカ=ブライトサウンドというように。しかしATH-CKM55はその図式に当てはまらない。非常に良いバランスと聴かせ所を持ったカナル型イヤホンだ。

英国のWHAT HIFI?でATH-CKM55が五つ星を獲得していたことから興味を持って購入してみた。それまで使用していたパナルやKOSS THE PLUG改もだいぶ古くなったので、ここらで新しい基準を手に入れようではないかといった試みだ。試聴には第5世代iPod nanoを中心に、CDPのヘッドホンアウトやヘッドホンアンプHA400改などを通しての総合的な判断としている。またレビュー前には30時間ほどのエージングを行った。

まず冒頭のブライトサウンドだが、その傾向はなく、いたって自然な高域の出方だと感じた。カナル型にありがちな篭り感もなく、ジャズやロックのシンバルを聴いても期待通りの範囲に収まる、暴れの少ないサウンド。中域はやや張り出してピアノやヴォーカルなどしっかり主張する。明るく抜けが良い。低域はかなり出ていて、これで物足りない方がいれば、その方は低音に特化したモデルをお買い求めになるべきだ。それほど必要にして充分な低域が得られる。音色はソリッドとは言えないまでも、弾力があり歯切れの良いサウンドを聞かせてくれる。ボワつきやダラダラ感はまったくない。特筆すべきなのは低域に他の帯域がマスクされておらず、いたってナチュラルな質感で楽しめる。サウンドステージや定位感はごくごく普通で狭くも広くもない。

カナル型に特有のノイズであるタッチノイズやボディノイズはある。歩きながらの使用では靴の衝撃音が体を通して飛び込んでくるし、ケーブルのタッチノイズが非常に気になるので、シュア掛けをするなどの対策が必要になるかもしれない。静かな環境では口腔のノイズが気になる。こうした弱点や遮音性から鑑みても、電車での通勤通学や、室内での使用に真価を発揮するだろう。コストパフォーマンスと財布に優しい価格から、ヘビーデューティーに使える逸品だ。

http://www.audio-technica.co.jp/products/hp/ath-ckm55.html